社会の要請に応える
世界経済を席巻した金融危機が後退し、実体経済にようやく持ち直しの機運が出始めました。しかしながら、欧州財政問題から世界経済への影響が懸念され、先行きの見えない国内経済の停滞感は、容易には払拭できません。
建設投資の縮小傾向と景気後退の中で、建設業を取り巻く環境は変化しました。いま私たちは、従来の概念に捕らわれない大胆な変革を迫られています。そのためにも求められるのは、社会の期待や要請に応え、信頼の絆を深める努力の積み重ねです。環境経営と公正で透明な企業活動の推進を通じたCSRへの誠実な取組みが、一段と重みを増していることを実感します。
地球の未来見据えた国際約束
2010年は国際生物多様性年です。10月には名古屋市で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、生物多様性の保全、持続可能な利用を推進する動きが世界規模で本格化します。日本が世界に表明した温室効果ガス削減目標は、身近な暮らしや企業活動に大きな変革を促すことになります。
国際約束のもと、産業、企業や家庭などで、温暖化対策の役割を分かち合う仕組みの構築が求められたのです。自然界に直接手を加えることの多い建設業ですが、環境負荷低減のための目標値を設定し、すでに積極的な行動を始めています。
生物多様性を核にした事業活動
当社は早くから「環境との共生」を理念に掲げ、生物多様性を核にした事業活動を展開してまいりました。09年7月には、従来の生態系保全行動指針を見直し、生物多様性の保全と、自然の恵みを持続的に利用・享受できる社会の実現に貢献することを目標に、全社的な取組みを充実させました。
新たな行動指針に基づき、建設資材など調達業務における生物多様性への影響を考慮するとともに、開発が進む都市での自然生態系の保全に、独自開発のエコロジカルネットワーク評価技術などを活用。自然の恵みを充分に享受できる「生物多様性都市」を提案しました。環境を「守る」から「創る」へのシフトです。低炭素社会の構築と健康な地球環境の確保に向け、これまで以上に解析・設計・施工技術の開発を図ってまいります。
より高い企業倫理の実践
私たちは170年余にわたる会社の経営理念として、常に「より高い企業倫理」を意識してきました。良き人づくり・会社づくりのその先に「現代の我々よりも完全な、より幸福な世代を育てる」こと、つまり「社業の発展を通じて社会に貢献する」ことを見据えたのです。
高い企業倫理に基づいたコンプライアンス経営の実践なくして、企業がいまを生きることはできません。大切なのは、法令やマニュアルに従うことだけではなく、背後にある精神を理解し、社会常識や公序良俗、モラルを守る、それがコンプライアンスの本質であると思っています。私たちは「鹿島グループ企業行動規範」に則って、社員一人ひとりが自らの行動を律して規範意識を高め、コンプライアンスを基盤とした企業経営に取り組んでいます。
安全と安心を引き継ぐ
「くらしを支え、未来をひらく」。私たちが加盟する日本土木工業協会が掲げるフレーズです。社会資本も良質なストックを使い継ぐ時代になりましたが、建設業の役割が、国土の安全と安心を守ることにあるのに変わりはありません。
「土木構造物はその名を刻むこともない多くの技術者によって作られる『碑』である」と、作家の曽野綾子さんは小説『無名碑』の中に記しました。今年の報告書の特集では羽田空港を例に、豊かな社会の進展に果たす建設業の役割を紹介しましたが、技術者が築き上げてきた構造物へのこだわりと情熱は、次の世代へも大切に繋いでいきたい。そして、より安全で快適な生活を確かなものにしたい。そう願っています。
人と地球のより良い関係
これから築いていかねばならないのは、人と地球とのより良い関係です。「環境の世紀」に相応しい世界を創るために、私たちはどのような貢献をすべきか。新しい社会創造のために何をなすべきか。未来のために何をいまやっておかねばならないのか。それをこれからもずっと考え続けてまいります。
みなさまの一層のご理解とご支援、忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げます。
2010年7月






